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イギリス留学でMBAを取得し、証券アナリストとしての自分を磨く

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多様な情報を掴み、研究と分析。−証券アナリストは私の天職
アメリカの証券会社での数年間の経験を積んだ後、証券アナリストとしてのより多角的な視点を得るため英国へMBA留学。帰国後は英国の証券会社で活躍。
文学より実学への興味

  証券アナリストといえば、その高度な専門知識と優れた分析技術で投資価値の評価を行い、投資家への助言などを提供する専門家のことだが、江夏さんがその道へ進んだきっかけは、大学(日本女子大学)時代のことだった。

 「実は、大学に入学した当時は、英文学科を専攻していたんです。でも学んでいるうちに、“私って、文学をそこまで好きじゃないんだなあ”って気づいて(笑)。じゃあ何が好きなんだろうって迷っていたところ、母が助言してくれたんです。“あなた、数学と英語が得意だから、アメリカの公認会計士の資格でも取ってみれば?”って」

 そして、大学2年のときにアメリカの公認会計士の資格取得と日本の簿記検定のための勉強を始める。母の助言がきっかけではあったが、もちろん自分がやりがいを持てる仕事、自分の能力を生かせる仕事は何かということを、江夏さん自身が真剣に模索していたことが大きかった。母と娘の予感は見事に的中する。

 「文学よりも、ビジネスなどの実学に興味があることが徐々に分かってきて、経済や経営の勉強に傾倒していきました。元来、自分の興味のあることなら時間を忘れて研究に没頭する癖があり、資格取得のための勉強以外にも、経済学部の授業を聴講したりと、とにかく勉強しましたね」

 結果的に公認会計士の資格は取得しなかったものの、簿記検定は1級を取得。そして、その資格をひきさげて、就職活動を開始。見事、アメリカの証券会社への就職が決まる。

証券アナリストの資格を取得

 江夏さんは高校時代の1年間、アメリカの高校に交換留学の経験があり、そこで磨いた英語力、それから大学時代に独学で取得した簿記検定1級の能力が認められ、ゴールドマンサックス証券に採用された。

 「欧米の会社は部門ごとの採用が一般的です。私はゴールドマンサックス証券のコントローラーズ部門に採用され、債券のリスク管理の仕事に就きました。ただ、仕事をしていると証券分析について理解できないことがたくさん出てきて。例えばクレジット・スプレッド(同じ投資期間内における債券の期待収益率と無リスク金利との差)というものがあって、投資家がどれくらいの見返りがあれば投資する気になるかを分析して数値化しているのですが、どのようにしてその数値が割り出されるのか、私には理解できなかった。すると、もっと詳しく知りたいという向学心が芽生えてくるんです」

 そこで、証券アナリストの資格取得の勉強を始める。入社2年目のことだ。アナリストの資格取得は最低でも2年間かかる。江夏さんは通常の業務と並行して資格取得の勉強に打ち込んだ。そして2年後、順当に資格を取得し、証券アナリストとしての経歴をスタートさせる。

国際的な環境で、より多角的に知識とスキルを磨きたい
−MBA留学を決意

 証券アナリストとは前述したように、市場で取り引きしている証券の価格と発行体の現在価値や信用リスクを分析して投資推奨を行う専門家のこと。しかしその業態は広く、投資アドバイザー、マーケット・アナリストの他にも、例えば証券会社の調査部門などに所属し、企業調査から個別証券の分析や評価を行うリサーチ・アナリストという専門職もある。江夏さんは分析・審査した結果を社内情報として発信する審査部のアナリストとしての職に就いた。

 「約3年間、審査部のアナリストとして働きましたが、個人的には投資家向けに投資推奨する仕事をしたかったんです。そんな折り、私のことをヘッドハントしてくれる企業が現れて、やりたかった業務とも合致したため転職しました」

 転職先は、メリルリンチ日本証券。
「仕事は数人のアナリストとチームを組んで行うのですが、ここで出会ったアナリスト達は、みな最高の知識とスキルを持ち、私もずいぶんと触発されました。特に上司の3人が欧州系のMBAを持っており、このとき将来のMBA留学を意識し始めました」

 MBAを真剣に考え始めたのは、もっと多くの“引き出し”を身に付けたかったから。

 「この時期、優秀な仲間に囲まれて仕事をしながら感じていたのは、自分にはもっといくつもの引き出しが必要であること。アナリストの武器は知識です。多くの知識から状況を分析して判断していく。そのためには国内の事情だけでなく、国際的にもっと多角的にファイナンスのことであるとか、経営についての知識を身に付ける必要があったんです。例えば、現在ビール業界ではM&Aが流行っています。でもこれを日本国内の事情で考えてみると、日本はビールの文化自体が若く、ビール会社においても買収や合併で育ってきた土壌がない。一方、ヨーロッパなどのようにビール文化の歴史が深く根付いている国の場合には、買収や合併で企業が発展してきたモデルケースは多い。そういった海外関連の知識の引き出しを多く持つことが、将来アナリストとして成長していくためには不可欠だと思いました」

網の目構造のオックスフォードで学ぶ

 転職して1年半後、意を決しMBA留学。留学先は英国オックスフォード。英国を選んだのは、国際的な環境であること、ゴールドマン時代の上司がオックスフォードへの留学経験者でよい評判を聞いていたこと、仕事で英国に行く機会が多く、英国の文化や街に魅せられていたことなどあるが、
「実質面で言えば、留学期間が1年間だったことも英国のオックスフォードを選んだ理由のひとつです。MBA留学ならばアメリカのビジネススクールという手もありますが、実際、アナリストとして2年間も市場から離れることはできず、1年間で学べることは魅力でしたから」

 プログラムは必修科目、選択科目、プロジェクトから成るが、選択科目やプロジェクトを通じて、ある程度は自分が学びたいテーマに重点を置くことができる。江夏さんはファイナンスに重点を置き、他にも英国の不良債権ファンドについてや、欧州企業のM&Aの状況と今後の可能性などについて学んだ。学習方法は、学内における調査に加え、さまざまな企業でインタビューをしたりインターンとして参加し、それを元に論文をまとめていく。

 「オックスフォードで学ぶことの素晴らしさ、楽しさは、ひとつに独特な大学の構造にあります。一般的にオックスフォード大学というくくりにはなっていますが、実際には“オックスフォード大学”という実態はなく、街に点在する40ほどのカレッジの集合体です。各々の学生は滞在先と学籍ごとにカレッジに属し、例えば同じMBAの学生でもカレッジが異なっているケースも珍しくありません。結果、他の専攻の学生と知り合えるチャンスが多分にあり、学生だけでなく他の専攻分野の教授に分からないことを質問に行くということも珍しくありません。オックスフォードの魅力、それは異なった専攻を学ぶ学生と教授を結びつける網の目構造の力でもあります」

オックスフォードで得た、専門知識以外の大切なスキル

 留学期間の1年間を経て帰国。知人にヘッドハントされ、英国系の証券会社であるバークレーズ・キャピタル証券への就職を果たした。

 「留学して得た知識は証券アナリストという今の仕事に役立っていますが、それは専門知識だけではありません。仕事柄、外国人の投資家と話をする機会が多くありますが、相手のバックグランドを考慮して話をするというスキルや、気持ちよくスムーズに話し合うためのスキルは留学したからこそ得られた重要なものです。これは、オックスフォードが単に専門分野の知識・スキルだけでなく、社交についても、しっかりと指導してくれたおかげだと思っています」

 証券アナリストの仕事は天職だと語る江夏さん。
  「将来的には、もう一度留学して博士号取得を目指すことや、海外の大学で教える立場に立つことにも興味があります。ただ、自分の興味のあることを徹底的に調べて、知識を得て、分析して考察する−−今はそれが楽しくてしょうがないですね。当面はこの職業を突き詰めて行きたいと思っています」 

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江夏あかね(エナツアカネ)さん
英国の証券会社に勤務
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留学先: Oxford University
プログラム名: MBA Programme

江夏さんのプロフィール年表

1989

高校3年生。アメリカミシガン州ブランドン高等学校に交換留学する。ここで英語力を身に付ける。

1991

日本女子大学に入学。英文学科を専攻していたが、ビジネスに興味を抱き、大学2年の時からアメリカの公認会計士の資格、日本の簿記検定の資格取得を目指して勉強を始める。

1995

アメリカの証券会社であるゴールドマンサックス証券に入社。

1996

同社で働きながら、証券アナリストの資格取得の勉強を始める。2年間で、資格を取得。証券アナリストとなる。

2000

ヘッドハントされ、メリルリンチ日本証券に勤務。欧州系のMBAを持つ上司に触発され、自身もMBA留学を真剣に考え始める。

2001/10

Oxford UniversityのMBA Programmeを専攻。主にファイナンスについての知識を深める。

2003

英国のバークレーズ・キャピタル証券に就職。

担当教員からのメッセージ

酒向真理教授
P&O Professor in Management Studies (International Business)
Oxford Said Business School

 オックスフォード大学は歴史が古く、ビジネススクールにはなじまないイメージがあるかもしれません。そこに、MBAプログラムができたことは、画期的なことでした。しかし、学問の文化の衝突でビジネススクールが孤立しなかった理由はオックスフォード大学が街に点在する40ほどのカレッジの集合体で成り立っているからです。各々のMBA学生は異なったカレッジに属す結果、専門知識をビジネススクールで学び、カレッジでその有効性を異なった専攻の学生や教授と話し合うという網の目構造での生活を送ることになります。学生の構成も国際的で、アメリカ中心になりがちのMBAプログラムを、国際比較や教授の最近の研究を織り込んだ内容にするように工夫されています。またクラス以外にグループプロジェクトを行うことにより、各学生の専門分野の知識を深めると同時に、他の学生とのチームワークも重視されています。江夏さんのプロジェクトも、このような特徴を取り入れています。プロジェクトは、「イギリスの中堅証券会社にDistressed Loan Business(不良債権ファンドなど)の部門を立ち上げたら」という仮定で研究が進められました。当時の不良債権ファンド市場は、日本の銀行セクターが抱えていた不良債権の大きさから、どちらかというと欧州よりも日本の方が活発でした。それでも、金融市場の流動性の活性化や直接金融と間接金融のリンクという意味では、欧州でも伸びが期待されるとみられていました。しかし、新しい分野のため、文献が限定的で、イギリスの金融機関の専門家以外に、サイード・ビジネス・スクールのファイナンスの教授陣やオックスフォード大学のOB、OGにもインタビューを実施し、高水準の研究ができたことは大きな成果だと言えるでしょう。

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