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イギリスへ大学院留学。その後金融庁で経済学のスペシャリストとして政策の現場で活躍する。

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経済学の理論をもっと仕事に生かすためには、エコノミストとしてのスキルアップが不可欠だった。
大蔵省(現財務省)の財務・金融に関する知識や経験を
さらに高めるため、英国へ留学。
3年間の留学で経済学の修士号を取得後、博士課程へ進みPhD.Candidateとなって帰国。現在、財務省関税局監視課に勤務。
   

 経済における専門家(学者)のことをエコノミストという。エコノミストは経済の性質を解き明かすための研究を行い、その結果得られた理論や実証に基づいて政策や企業経営に関する提言を行う人のこと。世の中のさまざまな状況から、最善の経済状態を模索し、対策を講じ、明確な実践方法を提示する。それは人々が健康であり続けるために研究を続ける医者にも似ている。例えば、不良債権やデフレといった大病の原因をつきとめ、進行を抑え適切な治療を施すといった具合に。今回、お話しをお伺いした大関由美子さんが活躍している職場、そこは、日本経済における最大の“専門総合病院”−−財務省だ。

日本に突きつけられた諸問題に「経済」の知識がどう貢献できるか?

 大関さんが経済学にのめり込んでいったのは大学時代のこと。

 「経済学を学ぶきっかけは、特別なものではありません。受験したのが経済学部だっただけですから。ただ、学んでいる過程で、理論よりも実践で何ができるかということに関心が湧いてきたのは確かです」

 きっかけは大関さんの祖母が脳梗塞で倒れ、寝たきりになってしまったことにある。

 「祖母の場合は田舎の実家で介護や治療を行ったのですが、例えば介護してくれる身内がいなくて病院への長期入院を余儀なくされる人の場合はどうなるのか。ふと、そんな考えが頭をよぎったんです。もちろん当時からニュースや新聞では高齢化・少子化問題を指摘する専門家は多くいましたが、それは単に社会保険負担料や税金を引き上げることで解決するといった単純な問題ではありませんでした。なぜなら一方で、国際競争力や人々の生活水準を維持していくことも同時に考えなければならないからです。当時、私は大学で経済学の理論を学んでいたのですが、このような出来事を通じて、次第に知識を実践に役立てる方法はないかと考え始めるようになったんです」

  理論を実践へ生かすために−−大関さんの思いは、「経済政策に関わる仕事がしたい」というより具体的な目標へと移っていった。

大蔵省に入省

 大学を卒業して、大蔵省(現財務省)に入省。大臣官房文書課に配属され、金融関係法令の審査を担当する。


 「ここでの仕事を簡単に説明すると、主に法律案の精査ですね。通常、各局の政策は法律案という形で国会に提出されますが、その際、各担当部署から挙がってきたドラフトを私たちがチェックするんです。ただ、扱うのが法律ですから、私がこれまで学んできた経済学とは畑違いですよね。新たに勉強しなくてはならないこともたくさんあり苦労もしました。それでも、今まで知らなかった色々な制度や改革に携わることができて、面白かったですね」

 実は、子供の頃は弁護士に憧れていたという大関さん。

 「経済政策というのは、発想としては経済学の理論や知識が必要ですが、それを具現化するには法律の根拠が必要です。多くの場合、法律や法令を制定、改正しなくては新しい政策は実現しませんから。法律のことを勉強することは仕事上に必要なことでしたが、ただ私の場合はそれ以前から興味の対象でもありました。子供の頃、弁護士に憧れていましたから、法律に携わる仕事には感心があったんです。その分、苦労を楽しめたのかもしれません。入省当時は大手金融機関が破綻するなど激動の時代であって、金融制度もめまぐるしく変わっていきましたけど、それを実体験できたことは、いま思えばとても勉強になったと思います」

英国留学で経済学のスペシャリストになる

 財務省に入省して2年後、大関さんは英国への留学を決意する。

 「実際にどの程度活躍しているかは分かりませんが、一般に欧米では、経済学の博士号を持ったいわゆる経済学のスペシャリストが政策の現場で活躍していると言われています。反対に日本の官庁には法律畑の人の方が多い。ちょうど日本にもエコノミスト養成の気運が高まっていて、さて自分はどうするのかと考えたとき、やっぱり経済学のスペシャリストになって、そういった立場で仕事ができるようになりたいと思ったんです」

  留学には人事院の制度を利用。財務省だけではなくさまざまな省庁から希望者を募り、選考にて決定される。留学期間は短期と長期があり、大関さんは長期の応募枠を突破した。

 「英国を選んだのは、ひとつに留学期間の問題です。アメリカの場合、経済学においては博士課程が主流で、修士号を取っても国際的な評価はそれほど高くありません。また、博士号を取得するまでには最低でも3年、通常、4、5年かかります。人事院の制度では、留学期間は2年間と決められていて、せっかく留学したのに志し半ばで帰国するのはどうかと思いました。その点、一般的に英国の修士号は1年間で取得でき、きちんとした評価を得られます。実際に私の受講したプログラムは2年間のものでしたけど、それでもアメリカに比べて短期間で取得できました。さらに、留学経験者達から、英国の大学院では経済学をより体系的に学ぶことができる、とアドバイスを受けたこともありました。これは渡英後にアメリカへの留学経験を持つ知人から聞いて分かったことですが、一般的なアメリカの大学院の場合は最先端の理論を習得することに主眼がおかれている場合が多く、対して英国の大学院の場合は最先端の理論とともに、例えばケインズの理論から現在までといった感じで体系的に経済学を習得することができるということです」

 London School of Economics(LSE)を選んだのは、専攻分野での伝統があり、もちろん経済学を体系的に学べること、さらにここではアメリカの最先端の理論も学べることが決め手となった。

 LSEの修士課程は2年間。ここでは、ミクロ、マクロといった経済学の基本中の基本の学習に多くの時間を費やし、その上で応用分野となる財政学や国際金融などを勉強していったと言う。

 「例えば所得税をかけると人々の経済活動がどのように変化していくのかといった、さまざまな政策や制度が与える影響を知るためには、経済の基本をしっかりと学ぶ必要があります。経済学とは、ある数式にあてはめて理論的に回答を導き出す学問です。そこが社会科学の中でも極めて特別な性格で、面白さでもあります。税金を上げる、すると『そんなに税金で取られるなら、働く気も失せるよな』という気持ちが働く。すると経済活動が鈍ることも考えられる。数式にあてはめ、どの程度税金を上げるのがベストかを考えていくわけです。ただし、起こりうるすべての状況を数式に盛り込むことは不可能であるため、簡単にはいきませんよね」

学問に没頭する環境。そうせざるを得ない環境。

 「一般に留学生とは言っても、学ぶジャンルによって集まってくる学生にも傾向があります。特に、アカデミックな分野を学ぶ学生というのは、将来その分野の学者を目指すというのが基本ですから、学問に対して非常にストイックですね。そんな友人達に囲まれての学生生活というのは、勉強に集中できるという意味では最高です」

 でも、少しだけ問題もあった。

 「ストイックであること。それは自分にも刺激を与えてくれ、素晴らしいことなんですけど、ちょっと付いていけないなぁ……ということも、正直ありました。というのも、普段から勉強好きな彼らですが、いざ試験が近づくと、2カ月くらいは本当に図書館や自宅から出てこなくなるんです(笑)。ちょっと一息入れて誰かと話したいなあと思っていても、誰も相手をしてくれない。『ああ、話し相手が欲しい』って、いつも思っていましたね」

 当初の留学期間は2年間。しかし休職届を提出して、1年間の博士課程に進んだ。博士課程は、「とにかく自分の研究を突き詰めていく1年間だった」と振り返る。研究は政治経済学の分野で、「日本の財政赤字がこんなにも膨らんだ事実を政府部門の意志決定プロセスと関連づけて考察すること」だと言う。ボリューム的にも、その研究内容をこの場で紹介することは難しいが、経済の理論を実践に移すそのひとつのモデルケースとして、研究を重ねたことは間違いない。

再び政策の現場へ

  帰国後は、金融庁総務企画局企業開示参事官室で、会計・監査制度等のディスクロージャー法制の改革を、さらに財務省財務総合政策研究所に移動後は、主任研究官として活躍。現在は関税局監視課にて、税関の水際取締り(麻薬・銃器の押収やテロ対策など)に係る制度の企画などを担当している。

  「おそらくキャリアアップとは、興味のあることに対して求められるスキルや知識を身に付けていくプロセスのことだと思います。特に次世代の人には、興味のあることをどのようにして追求していくのか、どのようにすれば仕事や勉強が面白くなっていくか、知って欲しいと思いますね」

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大関由美子(オオゼキユミコ)さん

写真▲写真左側が大関さん
留学先: LSE(London School of Economics)
プログラム名: MSc. in Public Financial Policy, PhD. in Economics

大関さんのプロフィール年表

1992

日本の大学に入学。経済学を学ぶ。在学中、大学で学んだ経済学を実践にうつしたい、経済政策に携わりたい、といった思いが芽生え、国家公務員を目指す。

1997

大蔵省(現財務省)に就職。大臣官房文書課に配属され、金融関係法令の審査を担当する。

1999

人事院の留学制度を利用し、大学院で経済学を学ぶために英国へ留学。London School of Economics のMSc. in Public Financial Policyで2年学び修士号を取得した後、PhD. in Economicsで1年学ぶ。

2002

留学期間を終え帰国。金融庁総務企画局企業開示参事官室で、会計・監査制度等のディスクロージャー法制の改革に従事する。

2003

財務省財務総合政策研究所に異動。少子化問題や中小企業金融問題に関する研究を行う。

2005

財務省関税局監視課に異動。現在、同課課長補佐。

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