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| デザインを学びに英国へ。 帰国後、ブランド「ミントデザインズ」を立ち上げる。 |
勝井北斗さんと八木奈央さん。二人は現在、渋谷区円山町の元倉庫を改装し「ミントデザインズ」というスタジオ&アトリエを開き、「真新しい」「希少価値のある」独創的な服をプロデュースしている。今回はアトリエにお邪魔して、二人の留学時代から現在に至るまで、どのように英国に関わり、それがどのように現在の活動に影響を与えているのか語っていただいた。
二人がファッションを学んだ大学は、Central Saint Martins College of Art and Design(以下CSM)。英国で最も高い評価を得ている5校のアートカレッジの大学連合University of the Arts London(旧London Institute。以下UAL)のひとつで、これまでにも世界的に活躍する多くのデザイナーやアーティストを輩出している。
| 放任主義で培われていく創造力 |
勝井「最初にCSMに行きたいと思ったのは高校時代です。その後、一度はアメリカのParsons School of Design(以下PSD)でも学びましたが、最終的に行き着いたのはCSM。ちょうど1990年代半ばは英国のファッションや音楽、そういったカルチャー全体が盛り上がっている事もありましたし。何よりずっと憧れ続けてきた学校ですから」
八木「私の場合、日本の大学で美術芸術学を専攻して主に美術史などを学んでいたのですが、自分はアートについて語るよりも、実際に作ることで表現したいと思い、ファッションを本格的に学ぶことにしたんです。そこで学校探しになるのですが、日本の学校もすべて候補に入れて考えた結果、自分にはCSMがベストだと思い、留学を決めました」
1997年、二人はCSMのキャンパスで出会う。それぞれが憧れ入学した大学で、彼らは何をどのように学んでいったのだろうか。
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八木「CSMのスタイルは、放任主義。つまり、日本の学校のように先生や講師が手取り足取り教えるのではなく、テーマを与えられたら、あとは自らが考え創作していくという感じです。そのためパターンや縫製の授業などは一切ありません。学校側は、100人の優等生を育てるのではなく、たったひとりでいいからディオールやシャネルでトップデザイナーになれる人を輩出できればいいという、極端に言えばそういった考えを持っていますので、日本の大学や専門学校のように、ひとり一人へのケアは期待できません。実際、学校側から学んだスキルなど、はっきり言えばないです。年間にいくつかのプロジェクト・テーマが与え得られて、そのテーマの作品をただ作っていくといった感じです」
勝井「授業料を納めているのにと、不思議に思われるかも知れませんが、実際にそういった感じで進んでいきます。ただ、CSMの学生が大学に求めていたことは、スキルや知識ではありません。その雰囲気を買っているというか、CSMの環境を買っている。建物の裏手にはクラスメイトが経営しているセレクトショップが並んでいたり、学生でありながらスタイリストをやっている仲間がいたり、学生それぞれのモチベーションが高く、そういった環境に触発されていくこと。そのこと自体がCSMで学ぶ大きなメリットであり、学生が求めていることでもあるように思います。いま考えても、そのような環境に身を置けたことは大きな財産です」
CSMでは、年間数回のプロジェクトが組まれ、学生はそのプロジェクト・テーマにそって作品を作っていく。例えば1年目の最初のプロジェクトは“ホワイト・プロジェクト”。
八木「色や柄ではなく、形だけで作品を作っていくというもの。このほかにも形ではなく色と柄でデザインするプリント・プロジェクトなど、ユニークなテーマが与えられます。そういったことを3年間繰り返して学んでいく。プロジェクトは、1年目は全員共通で、2年目以降にMen's、Women's、Print、Textilesなど、それぞれ選択した科ごとに分かれていきます。つまり、1年目は基礎課程で2年目以降から専門課程に入るといった感じです」
パターンや縫製、染色といった具体的なスキルを学ぶのではなく、創造していく上での発想や視点の持ち方を段階的に身に付けていく。デザインすること=創造することだとすれば、それはまさにプロのデザイナーとなるための、より実践的な方法でもある。
勝井「ファッションのクラスには縫い子さんやパタンナーといった、いわゆるテクニシャンと呼ばれる方がいます。この方たちがプロジェクトの作品を制作している学生に、縫い方などをサポートしてくれるのですが、こういったことも英国ならではのスタイルだと思います。例えばこれが日本の専門学校だと、縫い方ひとつからしっかりとしたスキルを身に付け、それを土台にデザインの勉強をしていかなくてはなりません。しかし、本来ファッション・デザイナーというのは服を縫う人というより、あくまでもデザインをする人たちのことです。服づくりに関する全行程ができなくてもいいわけです。つまりデザイナーならばデザインにおけるスペシャリストになればいいわけです」
それがビジネスの世界であろうと、ファッションの世界であろうと、日本はこれまでジェネラリストを育てる教育が行われてきた。しかし海外では、ジェネラリストではなくスペシャリストであることに価値を与えてくれる。
それでは、英国ならではのデザインのスペシャリストとはどういうものなのか。
| “クリエイティブ”を追求していく |
勝井「僕の場合はアメリカと英国の両方を経験したわけですが、やはり両国のスタイルには大きな違いがありました。アメリカのPSDはマーケティングに根付いたファッションのスキルを学ぶ、英国のCSMはクリエイティブを磨くといった感じです。これは大学の違いというよりは、各々の国の文化的背景やファッションに対する価値観の違いだと思います。ファッションは最終的にビジネスという側面を持ち併せているものですが、アメリカはその部分が非常に強い。ファッションへの考え方も、売れる服を作ることがベースにあるように思われます。反対に英国はもっとクリエイティブなこと、新しいものへの欲求が強く、それが認められる世界観を持っています。僕が英国に魅せられたのは、まさにそういった部分ですし、それが現在の創作活動を支えています」
デザインのスペシャリストになる、つまりプロのデザイナーになること。英国においてそれは、クリエイティブさを追求したスペシャリストであることに他ならない。
| 自信を持って自身のやり方を貫こうとする強さ。 |
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英国で生活し、英国の文化を肌で感じ吸収したこと。もちろんそのことは、いまの二人の活動に大きな影響を与えているという。では具体的に二人は異国の地で何を見て、何を強く感じたのだろうか。
八木「クリエーターとして考えてみると、日本人だけの環境ではなく、より国際的な環境に身を置けたことは非常に良かったと思っています。CSMには英国以外の国の方が多く集まっていました。そこで学ぶ過程で、たとえば色や形などの好みも国や各々のバックグラウンドが違えば異なってくることを知りましたし。そもそもスキントーンが違えば似合う色も変わってくる。そういったことは国際的な環境に身を置いたからこそ知り得たと思います。自分の感性とは違うけれど独創的で素晴らしい感性を持った多くの方に出会えたことは刺激になりましたね。それから、外国の方と接して一番思ったのは彼らの強さ、つまり何事にたいしてもバイタリティがあって、しかも独自のアイディアや方法論に自信を持ち、それを貫いていこうとする強さがあること。その部分は少なからずいまの自分にも影響を与えています」
勝井「日本人は優秀でもときに慎重で、自分の意見だけを押し通そうとはしない。外国の方のはその部分で自分の意見に迷いがない気がしますね。迷わないことはつまり、周りの人を信じさせる意味では大切な要素ですから」 それでは、クリエーターを目指すなら、いわゆる日本人的な調和や同調の精神ではなく、我が道を邁進する力強さが重要なのかと質問すると、そうではないという。
八木「日本人には日本人の素晴らしさがあり、それが駄目だという訳ではないと思います。ただ、私自身は英国で自分のペースでクリエイトしていくという考えに触れて、その方法が心地良い、自分に合っているということを知っただけです。その意味では、英国に行ったからこそいまのやり方で、いまのペースで創作活動を展開しているのだと思います」
| 自分たちだけの“ベーシック”を追求したい |
勝井さんは卒業時にCSMの代表として、GALA SHOW で作品を発表。その後ロンドンのi-D magazineでアシスタント・クリエイティブ・ディレクターとして活躍し帰国。一方、八木さんは、中国服装協会主催のブラザーカップ国際青年デザイナーコンクールで銅賞受賞するなど精力的な創作活動を行い、CSMを首席で卒業後に帰国。そして二人は、竹山祐輔氏とともに、ブランド「ミントデザインズ」を立ち上げた。
八木「自分たちのブランドを立ち上げたのも、英国に留学したからだと思います。あそこまで頑張ったのだからという思いがありましたから」
最後に、ミントデザインズでの創作活動を通じて二人が目指していることを聞いてみた。
八木「自分たちのベーシックを追求すること。ベーシックとは独創的でありつつ、一目で作り手のカラーが見えてくるもの。そのためにはじっくりと時間をかけ、試行錯誤を繰り返す事が必要です」
英国で培った創造力をベースに独自のファッションを追求していく二人。東京コレクションでの活躍など、今後も目が離せない。
| 勝井北斗(カツイホクト)さん 八木奈央(ヤギナオ)さん |
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1995/9
Parsons School of DesignにてWomen's Wear Designを専攻。
1997/9
Central Saint Martins College of Art and DesignにてFashion design & Printを専攻。
2000/6
卒業コレクションをGALA SHOWにて発表。その後ロンドンのi-D magazineでブック・プロジェクト「SMILE- I-D」の制作に携わり、アシスタント・クリエイティブ・ディレクターとして活躍。
2001/4
帰国
1992/4〜1996/3
同志社大学、文学部、美術芸術学専攻。
1997/9
Central Saint Martins College of Art and DesignにてFashion design & Womenを専攻。
2000/4
中国服装協会主催の第8回ブラザーカップ国際青年デザイナーコンクールにて銅賞受賞。大学を首席で卒業。
2001/4
帰国








